2020年度大学院・学部共修「比較政治」



1. 授業の目的と概要

【授業の概要】


1 概要

 この授業では、おもに先進諸国の政治と政策を体系的に比較し、現代政治を分析する視角と日本に関する深い理解を獲得することを目指します。なぜ平等を重視する国と市場の自由を重視する国に分かれているのか? グローバル化は各国にどのような影響を与えているのか? 雇用や社会保障のあり方はどう異なるのか? 少子化が進む国とそうでない国の政策の違いは何か? すべての国で極右政党が伸張しているのか? 右派と左派という対立は先進国でどう変容しているのか? これらの問いを、政治制度、労使関係、政党システム、社会運動、リーダーシップといった政治学の分析視角を用いて検討します。

2 到達目標

(1)先進国の政治経済の基本構造を理解し、その中で日本の特徴、長所と問題点を把握すること。
(2)比較を通じて政治学の分析方法に習熟し、それらを用いて現代のトピックを分析できるようになること。

3 方法

オンデマンド方式の映像講義トライブ講義を組み合わせます。毎回の講義では、各トピックの概要をレクチャーしたうえで、あらかじめ用意した討議事項についてグループ・ディスカッションを行い、理解を深めます。

【他の授業科目との関連】

基礎科目「政治学」「政治史」「政治思想」の内容を踏まえ、諸外国の現代政治に焦点をあわせた内容とします。ただし、これらの授業を一部しか受けていなくとも理解できるよう配慮します。また「社会政策」「国際社会学」などの隣接分野とも関係があります

【授業の計画】

 第1部では、先進国の政治を大きく「レジーム」という観点から比較し、現在までの違いを検討します。第2部では、政策トピックごとに各国の違いとその背景を比較検討します。また各回ごとに政治学の概念や方法を決め、事例分析をつうじてそれらを習得できるよう配慮します。

1 比較政治学とは何か / 戦後レジーム
2 戦後レジームの分岐
3 戦後レジームの再編(1)1970年代から現代まで
4 戦後レジームの再編(2)イギリス
5 戦後レジームの再編(3)スウェーデンとドイツ
6 戦後レジームの再編(4)日本
7 グローバル化と格差
8 雇用政策
9 少子化と家族政策
10 排外主義と移民問題

【テキスト】

政治学、比較政治の基礎文献をリーディング・アサインメントとして一部抜粋します。詳細は検討中ですが、下記のようなテクストの20〜30頁程度が候補となると思います。

田中、近藤、矢内、上川『政治経済学』有斐閣アルマ、2020年(近刊)
久米郁男ほか『政治学 補訂版』有斐閣、2011年
粕谷祐子『比較政治学』ミネルヴァ書房、2014年
宮本太郎『福祉政治』有斐閣、2008年
待鳥聡史『代議制民主主義』中公新書、2015年
田中拓道『福祉政治史』勁草書房、2017年

【授業外の学習】

(1)あらかじめ指定したリーディング・アサインメントの読解。

(2)各トピックに関連した討議事項についての準備。授業のなかでグループ・ディスカッションを行う予定。

【成績評価の基準】

(1)通常点(30点)

講義のなかでグループ・ディスカッションを行い、その結果を終わりに提出すれば10点(×3回)。

(2)書評(20点)

第6回の講義までに書評またはグループ発表を選択する。書評は提示された書評リストのうち1冊を選び、1200字程度の書評を提出する(書き方は授業の中で説明する)。

(3)学期末レポート(50点)

学期末レポートは、到達目標にしたがって以下の基準で評価する。
(1)先進国の政治を取り巻く共通の環境変化を説明できるか。
(2)比較政治学の方法を用いて分析できるか。

以上の合計で60点を合格の目安とし、それ以上は相対評価とする。

レポート締め切りから数日後に、仮成績、採点基準、講評をmanabaに公開する。

【受講生に対するメッセージ、他】

政治・経済・社会を横断する高度な内容ですが、講義とディスカッションをつうじて、一人一人が日本と世界の将来について、自分なりのビジョンを持つことができるよう努力します。

※詳しいスケジュール予定